ドイツゴサイコウ

ドイツ語の仕組みについて再考するブログ

【ドイツ語と英語の関わり】音韻末子音の無声化(Auslautverhärtung)

今日は、英語とドイツ語の共通点について短く考察していこうと思います。

 

皆さんは、英語の授業で習った英単語の複数形の規則について覚えていますか?wolf (単)/ wolves(複) みたいな、語尾の子音が変わってしまうあれです。よーく見てみると、何か気付きませんか?

ドイツ語の読み方の規則に、語末子音の無声化(= Auslautverhärtung) というものがあります。Hund と書くのに、hunt という読み方をするというものです。逆に、複数形の Hunde になると、文字通り hunde と読みます。この二つの違いは、語尾の子音が無声(= stimmlos、ここでは t のこと)か、有声(= stimmhaft、ここでは d のこと)かという点です。有声子音と無声子音の違いを専門用語で清濁(= Stimmhaftigkeit)というのですが、t とd は清音か濁音かという点を除いて全く同じ音です。すごくわかりやすい例を挙げると、日本語のひらがなです。

という音を比べてみると、発音する位置は全く変わらないのに、濁点が付くだけで二つの違う音になります。k と g、 s と z などでも全く同じ規則が当てはまります。のように。 日本語のひらがなだと事情は変わるのですが、音声学的にいうと、p と b、f と v にも全く同じ規則が当てはまります。 ドイツ語の relativ という単語は、原形の発音は relatif ですが、活用されて relative になると、relative となります。ここでも違いはf とv、清濁ですね。

 

この知識を基に英語の子音、fとvを比べてみると、ドイツ語と全く同じ現象が起きているのが分かります。原形だと f なのに、複数形では v という形が使われます。ここまで英語とドイツ語が似ているのは、何を隠そう、ドイツ語と英語が非常に近い親戚であるからです。同じような言語の発達をたどり、同じような規則が言葉の中に残ったんですね。

このように、文法の中から似ている点を炙り出して言語同士の親戚関係を洗い出す分野を、歴史言語学(= Historische Linguistik)といいます。文法そのものの偶然の類似性(例えば日本語とフィンランド語など)を見つけて分析する分野を、言語類型学(= Typologie)といいます。

 

昔なんとなく習った英語の文法と、新しく習ったドイツ語の文法が頭の中でリンクした時の喜びは、言語オタクにとってたまらないですよね~。言語学の専門用語を交えながらコアな内容になってしまった今回の記事ですが、気に入っていただけたならうれしいです☺

 

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