みなさんこんにちこんばんは。ドイツ語音韻論シリーズも、一回目・二回目に引き続き三回目に突入しました。予告していた通り、ドイツ語の母音の長短の見極め方についてお話ししていきます。
さてドイツ語を学習された方なら一度は、ドイツ語の母音の長短をすぐに見分ける方法があればいいのにな~なんて思ったことがあるかもしれませんね。母音の長さが伸ばし棒を使ってはっきりマークされる日本語と違って、ドイツ語では、母音の長さは結構分かりづらいからです。今日はそんな方のために、いくつかコツを紹介します。
①長母音の見分け方
まずは、長母音の見極め方から。ドイツ語には、Längungszeichen/Dehnungszeichenと呼ばれ、長母音をマークする役割を担う文字があります。日本語でいう伸ばし棒みたいなものですね。これには h と二重母音の二つがあり、ihnen、Uhr、Kaffeeなどがその例です。これらの母音は、必ず長母音として発音されます。
そのほかに、ieは基本的に長母音になります。例えば、die、Krieg、schließenなど。例外は、Aktie、Studie などのラテン語由来の外来語。カタカナにすると、アクツィエ、シュトゥーディエみたいな発音です。コアな話をすると、この場合の ie は一音節ではなく二音節なので、はっきりイ・エと区別して発音しているのが聞こえるはずです。それに対し長母音の ie は一音節なので、イーとしか聞こえません。
②短母音の見分け方
短母音は、母音そのものではなく、その後に続く二重子音によってマークされます。Betten - Bete、denn - denという組み合わせを見ると、二重子音での前の母音が短く発音されるのがはっきりしますね。ここで注意してほしいのは、ドイツ語では、日本語と違って、小さい「ッ」や「ン」が入るわけではないということです。MutterやButterという聞き慣れた単語も、よく聞くと、ムッター・ブッターというよりは、ムター・ブターと発音されます。Nonneも、ノンネではなくどちらかというとノネと発音されます。
また、tz、ckも二重子音と同様の扱いを受け、短母音をマークする役割を担っています。例は、Katze、backenなど。(ただし、北ドイツの方言ではckが長母音をマークする場合があります。このテーマについてもっと知りたい方は、こちらの記事もどうぞ!)
③どっちもありえるケース
一番厄介なのは、長母音や短母音をマークする文字がなく、一見しただけでは判断できない単語です。例えば、Mine、Kalk、gut、Wal、Küche、Wald、Kuchenなど。ものすごく雑にいうと、母音の後に子音が二つ以上続く場合、短母音の場合が多いです (Kalk、Küche、Wald)。でも、Kuchenみたいな例外もありますよね。これに関しては、アクセントと音韻構造が大きな役割を果たしているのですが、これを説明しようとするとすごく専門的になってしまうのでここでは省略します。
結局、特に母音の長短がマークされていない単語の読み方は、焦らずに一つずつ覚えていくのが一番早いのかなと思います。慣れてくると不思議なもので自然と読めるようになります…。
この三つを表にするとこんな感じです。
マークあり | マークなし | マークあり | |
---|---|---|---|
母音の長短 | ②短母音 | ③短母音・長母音 | ①長母音 |
綴り | 二重子音 | 単母音・単子音 | 二重母音・h・ie |
例 | Mitte | Mine | Miete |
他にもう一つ重要な規則があって、接頭詞が付く時や、二つ以上の単語が組み合わされる時には、h や二重母音が長母音をマークする規則は適用されません。例えば、behalten (be + halten)、beenden (be + enden)など。また、単語がドイツ語由来なのか、外来語なのかといった要素も、綴りと読み方の関係に大きく影響しています。
いろんなパターンがあるので、これだけがすべてとは言い切れないのが苦しいところです…。単語の読み方を覚えるのは骨の折れる作業にはなりますが、なんとなくコツがつかめるとその先に進みやすいです。そのために、普段からドイツ語の発音と綴りの規則性に気を付けるといいかもしれませんね。ちょっと意識するだけで、発音の上達にもつながりますよ!
最後に、綴りと発音の関係性のことを、専門用語でPhonem-Graphem-Korrespondenz と呼びます。英語のようにこの関係性が非常に複雑な言語もあれば、日本語のローマ字のように単純な場合もあります。ドイツ語では、これが複雑な場合tief、単純な場合flachという言い方をします(これもコロケーションの一種ですね)!
専門的な話は増えますが、これからも、ドイツ語の読み方・発音のコツを定期的にお届けできればいいなと思います。
それではまた☺